星組バウ公演『燃ゆる風ー軍師・竹中半兵衛』
星組公演「燃ゆる風ー軍師・竹中半兵衛」を観劇してきましたので感想です。
今回はどうしてもチケットが手に入らなくて諦めて、あきらめないといけないと自分で自分を諭していたのですが、ご厚意により観劇することができました。願えば叶う、というか心の奥底では諦めきれなかったのが通じたのかもしれません。
そしてこの公演のキーワード「命の使い道」が今の自分に向けられたテーマであったからかもしれません。
宝塚大劇場には何度か行ったことはありましたが、バウホールは実は初めてで入った瞬間、
「ちっさ!!ちかっ!!」
客席約500席という小ホールで銀橋やオケボックスもなくステージと客席の近いことを体感して改めて驚きました。
テレビで見ると舞台はもっと広く見えたのですが、舞台に対し客席がこじんまりとしています。
この空間で観れるのかと思うとそれだけで緊張が高まります。
凛々しく美しい希代の軍師・竹中半兵衛役がハマってる!
戦国の世にこんなに長身で小顔で美しい武将は恐らくいなかったと思いますが、それでも実際にいた竹中半兵衛さまはこんな感じだったのだろうと思えるほどです。
最初にこの演目をみたときは「は?戦国武将?七海ひろきが??」とクエスチョンマークが溢れていました。
七海ひろきの魅力を存分に発揮するのはスーツ物だろう、と。一番遠いと思っていた日本物で大丈夫だろうかと最初に思ったのが嘘のように、
「これは七海ひろきを待っていた役」と言える軍師・竹中半兵衛はまさに七海ひろきの新しい一面を見せてくれたのでした。鈴木先生ありがとうございます。
この漫画から抜け出てきたような美しすぎる七海半兵衛さま!
以前に紅さんが「クールそうに見えるのに中身は熱すぎる」と七海さんを評していましたが、まさに竹中半兵衛もクールで知的な軍師のイメージですが内面は熱い思いを抱いていた人物。
本当に七海さんにピッタリすぎて、役だか本人だかの境界線が見えなくなりそうなほどです。
その熱い思いはNOW ON STAGEやスカイレポートなどでも意気込みを語っておられました。全ての内容をご紹介できませんが、ナウオンでいきなり、
「私、竹中半兵衛の生まれ代わりだと思うんです!」
には周りの出演者もちょっとびっくりされたご様子でしたが、七海さんいわく「役(半兵衛)の考え方と自分の考え方の相違が全くなくスンナリ入ってくる」とのこと。
七海さんは役作りで、「普段は私はこう思うけど、この役はそう考えるのね」とすり合わせる作業をしているけれど半兵衛のときは、考え方の相違がほぼなかったそうです。
半兵衛との対比でみせる専科・悠真倫さん
主役の”静”を引き立ててくれるのが”動”の秀吉役の悠真倫さんです。
この方がコミカルであちこち動いて喋ってという勢いたっぷりの秀吉を演じて下さったからこそ、半兵衛のクールで知的な部分がより引き立つのです。
出番も多く(ほぼ二番手)第二の相手役とまで言われていた意味がよく分かります。
秀吉によって表舞台に引っ張り出された半兵衛ですので、秀吉あっての半兵衛という関係性がよく出ていらっしゃいました。 まりん様様です。
脚本はモヤっとがあるけど
公演が決まったときから竹中半兵衛漫画を始め、竹中半兵衛のことを調べていたので(元々歴史が好きなのもありますが)正直脚本の設定にはモヤっとするところが多くツッコミ所がたくさんあります。
元々、竹中半兵衛の逸話には創作が多いと言われていますが、周りの人物の設定(物凄い設定)を創作しちゃうのはどうかなーと疑問が残りました。
半兵衛を描く作品なので多少は仕方ないと思いますが、正妻のいねさんの設定はかなりモヤっとします。
半兵衛の親友である三郎太(今作の中で創作の人物/天華えま)は桜華でもそういう設定でうまく描けていたしギリ許容範囲か…とも思ってましたが、一幕ラストの盛り上がりを思うと全く引っかからないでもないというのが私の正直な感想です。
創作が悪いといっているのではなく、そこだけが異質な感じが出ていたのが引っかかりました。
透明感のある歌声、真彩希帆
今回大変だったのは実はきいっちゃんこと真彩さんだったのではないかと思います。
バウヒロインなのに、半兵衛の正室なのに、名前すら史実にない人物です。ぐーぐる先生に聞くとぼやっと「いね」という名前がヒットする程度でエピソードは殆ど見当たりません。
あの竹中半兵衛漫画にも1コマしか出てこなかった悲しい奥様…。
まあ宝塚ですから、ラブ要素は必要ですから夫婦愛入れますよね、わかります。くらいの気持ちで受け止めていた半兵衛の妻「いね」さんですが、この作品ではほぼ創作の人物と思った方がモヤっとしないかもしれません。
しかしその人物を優しく強く、戦国の妻として半兵衛を支える妻をしっかりと演じられていました。
定評のある歌も見事でした。
聡明な気品あふれる黒田官兵衛
天寿光希さんの演じる官兵衛も凄いあっているなーと思っていたのですが、思ったより出番が少ないのが残念でした。
半兵衛に負けない熱い思いを持った男を好演されていました。
監禁から救出されたときのやつれた状態が痛々しかったほどです。
個性豊かなキャスト
魔王感たっぷり!織田信長
出演者の中で一番偉いお役の織田信長(麻央侑希)。
なかなかの残虐非道っぷりで気持ちがいいほどでした。昨年月組で信長をやっていたのでちょっと難しいのではないかと思っていましたが伸びやかでカッコいい信長さまでした。
しっとり落ち着いた大人の女性・濃姫
この方も説明不要な有名な方。
今作では創作された部分が大きく、キーパーソンでしたが素敵に演じられていました。
こういう大人の女性を演じられる女役さんがいる星組に期待が膨らみます。
分かっている展開なのに泣けてしまう
二幕にある、黒田官兵衛の息子・松寿(後の黒田長政)が官兵衛に謀反の疑いがかけられ、信長に「人質の首をはねろ!」という命を竹中半兵衛が機転をきかせて匿い助けた話は有名です。
竹中半兵衛のことを調べたら絶対出てくるエピソードですから、会場に来るかたの殆どが知っているはず…なのに、涙が止まらないのです。
一幕のラストでも三郎太がオスカルか?と思うようなフラグがたつシーンがあるのですが、やはりそうなるか…の展開に、そこでも会場中が涙が止まらない状態です。
三郎太は架空の人物でも実際に戦では沢山の人の血が流れているのです。
実際に甲冑を着て戦地に出向いておられた(戦ってもいた)半兵衛さま。
半兵衛さまはそんな戦国の世を終わらせようという夢を抱いて戦っておられた、その生き様を本当にその時代を生きているかのように七海さんは熱演されていました。
涙も、愛も竹中半兵衛として生きておられました。
「役に生きる」を感じた七海ひろきの竹中半兵衛
本当に、舞台の上で竹中半兵衛という人を生きているな、というのが伝わってきました。
七海さんが竹中半兵衛という役を演じている、のではなく、竹中半兵衛だ、とストレートに思える何かがありました。
力み過ぎてて途中おやっ?と思う所もありましたが、全体的に素晴らしい出来だったと思います。総勢29名とは思えないです。さぞ大変だったでしょうに。
そしてもう一つ注文をつけるとしたら、もう少し大きなホールでやって欲しいということです。
ドラマシティとかドラマシティとか。それと東京でもやって欲しい!(二つになってる(;^_^A)青年館よりやや小さめなホールは首都圏にたくさんあります。東京に限らなくてもいいと思うんです。
とにかくバウホールだけで終わってしまうのは非常にもったいない作品だと思います。
観たくても観れない方も沢山いらっしゃいます。私もたまたま観劇できたけど本来その中の一人なはずでしたので、ぜひお願いしたいです。
東京のOSOチームは既に千秋楽を迎えて、燃ゆる風観劇されている情報(私の観劇した19日ソワレにも数名いらっしゃいました。18日楽だったのに早い)なども入ってくると次回の新生星組の公演にも期待がかかります。
七海さんのロベスピエールは新曲もあるそうですし、少し早いけどそちらも楽しみにしています。
※この記事は2017.1に前ブログに掲載していたものを編集したものです。